久しぶりの一日雨で、12月の寒さとか。
雨の日は本、と言うことで最近読んだ小説から
「ポリティコン」を紹介します。
ポリティコン(上、下)
(桐野夏生)
(文芸春秋)
女性作家(おばさん)が若い男性の心理変化を描いた小説。女性作家が男性を主人公にして描くのはめずらしいのでは?
自給自足で芸術を愛して集まった唯腕村(理想郷(共同体))が山形に残った。若者は村から出て行き、理想郷に残ったものは老人の男女。嫉妬と愛憎が渦巻く世界となっている。働くのが無理で嫌になった老人を誰が支えて行くのか?今の日本の状態とダブる。一人の若者、東一のみが理想郷に残る。彼のこの世界を背負って行かねばと思う気概と、渦巻く問題に逃げ出したくなる気持ちが交差する。そこへ、脱北者を手伝う母親が中国で捕まり一人になった若いマヤと女ざかりの脱北者スオンが唯腕村へ入り込む。この小説の主人公はトイチ(東一)とマヤ(真矢)。
コミュニティーは年を取り、若者は次々出て行き、残ったのは年寄りだけ。経済的にも困窮する。若き主人公、東一も東京へ出て行くが山形の片田舎から東京へ出ても特別な能力が無いので山形の田舎の共同体にいるより悲惨な状況になる。若者が居なくなった唯腕村にいつしか、脱北者やベトナム人、中国人等の国で食べて行けなくなった若い人が集まりだす。この変化は日本の田舎の縮図を描いている気がする。
東一(といち)の心理的変化を通して桐野夏生worldへと導かれる思いで長い880ページにも及ぶ小説だが退屈すること無く読めました。
権力を握った時、ちらちらと出てくるわがままな考えとしっかり統治しないといけないとの思いが交差する東一でした。
下巻になるとマヤ(真矢)の話が主体になり、最後にトイチ(東一)と再開。
小説の締めくくりはこれで終了にしても良し、続きを書いても良し、の状態で終わる。
桐野夏生は最近、社会派小説家になっているがちらほらと桐野夏生が小説家になった時期の推理小説家の顔が出てくる。
長編ですが、面白いのでお薦めします。