でも、しとしとと雨が降り寒い一日でした。
蒼のなかに(Into the Blue)
(玉岡かおる)
(角川書店)
幻の総合商社「お家さん」が面白かったので、手にした私にとって二冊目の「玉岡かおる」です。
表紙は揖保川の流れと空を思い出させてくれました。
テーマは「揖保の糸そうめんを世に出し、全国に認知されるまで」の話かと思いましたが、ちょっと違いました。
「老舗揖保の糸」の老舗で育った漆原紗知は旧家のしきたりに生きる母親に反発し、家を飛び出し、40代半ばで雑誌を出す。自分の会社をやっと軌道に乗せた時、母親と同じ癌を宣告され、入院する。苦しむ中、播磨の家のことをいろいろ思いだすのでした。
紗知のキャラクターが面白いです。入院しても、仕事で走り回っている癖で、つい廊下を走ってしまい看護婦にしかられる。金曜日に入院して翌日からは三連休、ならば「病院にいても仕方がない」と外泊願を出し、仕事に入る。こんな彼女だが、フランスへ取材旅行に行き、帰り一日時間があったのでローマで遊び、頼まれた土産を買い、再びフランスへ戻った時、10分差で搭乗させて貰えない、ぶつぶつ文句を言うが相手はフランス人で・・・、その時、仕事上のカメラマンの若い男性が助っ人に・・・。気丈で仕事はバリバリこなすが、病気になるとからっしき駄目になる彼女。どこかにいそうなかわいい女性です。この男性と元夫が現れ、揺れる乙女心(?)。こんなことでは駄目だと終わりにしようと思うが・・・・??
という感じですが、癌にかかった時の心境とやっと理解できた母親の思い、旧家のしきたりがうまく描写されている本です。最後は美しい自然と「日本の文化」「しきたり」「神」がテーマになって行きます。殆ど、紗知が心の惑い、悩み、を心の中で語る物語です。大変面白かったです。
「玉岡かおる」は兵庫県で育って神戸女学院を出た女性です。
したがって播磨の国(兵庫県)を舞台にした作品が多いのではないかと思います。
玉岡かおるHP
http://tamaoka.info/index.html